愛と幸せの暮らしに

コラボレーションデザインパートナー 吉田 恵美 Yoshida Satomi
スペシャル対談

スペシャル対談
吉田 恵美 Yoshida Satomi
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金城 宏冶 Kaneshiro Koji

資産価値を上げるリノベーション術
~研ぎ澄まされたデザイン感性と見極め力~

近年リノベーションという言葉が浸透し、住まいに手を加えることへの興味が高まっているが、
今後その流れは加速していくのか。リノベーションが当たり前の文化として行われているアメリカで、
多くの著名人の邸宅デザインなどを手掛ける超一流のデザイナー吉田恵美氏と、朝日住宅の代表金城が、
今後の不動産流通とリノベーションについて対談しました。

吉田 恵美 / よしだ・さとみ

アメリカを拠点に活躍するインテリアデザイナー。
19歳でアメリカに渡り、以降20年以上商業デザイン・住宅デザインに携わる。平成17年にデザインスタジオYZDAを創業。

世界の建築・インテリアデザインサイト「HOUZZ」にてサービスやデザイン賞を受賞。現在、新聞、雑誌やメディアなどでも幅広く活躍中。

金城 宏冶 / かねしろ・こうじ

朝日住宅株式会社代表取締役社長。平成28年7月の代表就任以降、不動産業界での経験とセンスを活かし社内改革に尽力し、業績拡大に向け邁進。

アメリカに居住歴があり、日米の不動産文化の差異から今後の不動産業界発展の糸口を模索する。

トランプ大統領のプロジェクトで学んだ経験が今の基本をつくった

金城社長

インテリアデザインにおいて、アメリカで活躍されている方ということで紹介を受けたのですが、お話によるとトランプ大統領のカジノリゾート開発デザイン業務などにも携われたそうですね。

吉田氏

私は1994年にアメリカの大学でインテリアデザイン科※を卒業しまして、まずはアメリカにある大手建築会社に就職しました。そこではホスピタリティデザインやコマーシャルデザインといって、ホテル、レストランやオフィススペース等の商業デザイン、コンドミニアムを中心とする住宅デザインなど大規模なプロジェクトに携わっていました。その後、引き抜かれて入った会社でご縁をいただいたのが、今のアメリカ大統領であるトランプ氏のカジノリゾートホテルのプロジェクトでした。そのプロジェクトでは4人の女性デザイナーの中の一人に選ばれ、プロジェクト全体のサポートを行うアシスタントジュニアデザイナーとして、コンセプトからインテリア設計を中心とするデザイン業務に携わっていました。その後も、煙草のマールボロで有名なフィリップモリスインターナショナル社、またスターバックス本社など、有名な企業のお仕事や規模の大きいインテリアプロジェクトもたくさん手掛けてきました。
※米国アイオワ州大学芸術学部インテリアデザイン科を首席で卒業

金城社長

そのプロジェクトで影響を受けたり、今活きていることは多いのでしょうか。

吉田氏

そうですね、それぞれのプロジェクトにて貴重な体験ができました。特にトランプ氏のプロジェクトでは4人の女性インテリアデザイナーと大手建築会社の方々と、長距離間でのコラボレーションでしたので、一般的なデザインや設計能力だけでなく、緻密なチームワーク力とマネージメント能力が重要視されました。その時に学んだことが今の基本となっています。アメリカに住んで30年ほどになりますが、大手企業に勤めて色々な世界で学んだ経験がなければ今はないと思います。

感性を磨くことが
コミュニケーション力に繋がる

金城社長

デザイナーのような個人のセンスが前面に出る仕事において、アメリカ人とコラボレーションをするのは難しいのではないかと思ってしまうのですが、いかがですか。

吉田氏

日本でもアメリカでも同じことですが、コラボレーションすることの基本はコミュニケーションだと思っています。コミュニケーションの形はいろいろありますが、私は五感を通しての表現を重視しています。言語力ではどうしてもアメリカ人に勝ることはないので、常に向上心を持ち、そして実行能力を養いました。また、言葉の壁や文化の違いを通じて、私の個性を考えたときに、「自分の持っている長所を引き出すこと」「デザインの感性や知識を常に磨くこと」だと思いました。日本で生まれ育ったということも、自分の誇りとなっています。世界中の色々なものを見たり、聞いたり、それを試したりなどして、日本人として、自分にしかない、そして自分しか提供できない感性を引き出してきました。それは誰にもできない表現、個性であり、また海外で生きていく力でもありました。例えば、五感を活かした『色彩感覚』『造形能力』『美的センス』など、クリエイティブのエキスパートになるということです。私が大切にしている言語を超えたコミュニケーション力を高めることでアメリカ人とのコラボレーションを可能にしています。

金城社長

なるほど。やはりその繊細な部分は、日本人ならではの感性とアメリカ人も認めているのでしょうか。

吉田氏

そうですね。日本人の細やかで繊細な部分については、アメリカの人にも、とても認識されているのかもしれません。ニューヨークでは、日本文化、特に、食文化や歴史にとても興味がある人が多いと思います。建築やデザイン文化を通して見ている『繊細さ』はあると思います。あとは、細やかさという意味では女性的な『気付く』視点がすごく重要だと思います。多民族国家であるアメリカでのお仕事は、それぞれの文化に寄り添い、細やかな配慮をすることにとても気をつかっています。

金城社長

主張が激しい欧米の方と仕事をしていて、意見がぶつかったときにはどうされていますか。吉田さんが引くということもあるのでしょうか。

吉田氏

私は常に謙虚であることは必要なことだと思っていますので、アメリカ社会でお仕事をしている時に日本流の一歩引いて意見を聞き、そして柔軟性を持って意見を言うということが必要だと思っています。ただし、プロとしてのアドバイスは相手を尊重してお伝え致します。アメリカでは、全く意見を言わないと「意見がない」と判断されて、会議などもそのまま進行してしまいます。ですから自分の持っている考えをロジカルに述べることは必要だと思います。そしてしっかりアピールして、自分の意見を聞いていただくこともあります。ただ、自己満足的に自己主張するのではなく、答えがある上で主張することを心掛けています。

金城社長

仕事仲間でもそうですから、実際の現場やお客さん相手だともっと大変ですよね。これまで上手くいかなかったことや嫌になったことなどはありますか。

吉田氏

そういう経験はたくさんあります。製図やデザイン上ではうまくいっても、現場ではうまく動かないこともありますね。それと、アメリカでは発注や配送のトラブルが多いです。発注したものと全く違うものが届く時もありますし、タイルなどを注文して配送された時点でそのうち商品の30%くらいが壊れていることもありました。つまり、物流管理やロジックスサービスに頼りきれないんです。何か月も掛けてデザインや制作をした特注家具やラグも理想通りに綺麗にできあがったなと思っても、最後の出荷や配送作業で、現場に届いたらキズがついていたり、崩れていたりという予想外の事例もたくさんあります。インテリアデザイナーは、クライアントに出会い、そしてデザインのスタートラインに立った時から、商品がクライアントの手元に届くまでがお仕事だと思っています。その中で、物流管理やロジックスサービスが、インテリアデザイナーにとって一番頭の痛いプロセスかもしれません。

日本でインテリアデザインが
普及するために必要なこと

吉田氏

日本のインテリア事情で私が思うのは、日本では住空間において「インテリアデザイン」と「インテリアデコレーション」という相違点がまだ確立されていないということですね。インテリアデザイナーとして世界や日本国内で活躍されている方はいても、商業デザインの分野に偏っていると思います。私は住宅に関するインテリアデザイナーが今後益々日本でも伸びていってほしいと願っています。日本とアメリカでは建築文化もかなり相違があり、その価値観を変えていくのはかなりの時間と労力が必要だと思います。今後は日本国内のリフォームやリノベーションの分野でも知識豊富でクリエイティブなインテリアデザイナーを育てていくことは大事なことだと思います。感性や美を追求し、そして問題意識や解決能力を持つこと。また、技術やコミュニケーション能力を備えている人材を育成していくことができれば、文化も少しずつ変わっていくはずです。

金城社長

確かに日米の建築文化は全く違いますね。日本では新築から25年で建物の評価額はゼロになります。だからその都度建て替えていくということをしていましたが、アメリカは70年、80年使うなどということも普通ですよね。

吉田氏

そうです、その古い建物を自分のライフスタイルに沿って改装する、また予算に合わせて全体的なバランスを見極めて修理していくというスタイルですね。70年、80年さらには100年以上の一戸建てやコンドミニアムも存在します。日本はリサイクルという問題には、北欧の国々のように真剣に取り組んでいるのに、住宅のリサイクル、つまり住宅のリフォームやリノベーションは今まであまり重要視してこなかったですよね。だからその分野をどんどん表に出していくべきだと思います。価値があるものが実際にあるのに、それをどう活かすかをわかってないのかもしれないですね。不動産の存在意義を強く持ち、長期計画で住生活を眺めることが、今後、少子化の日本、そして建築文化を守るための課題になるのかもしれませんね。

金城社長

ただ、日本とアメリカでは住宅の大きさがそもそも違います。日本の住宅は昔からウサギ小屋なんて言われていましたが、本当に狭い土地になんとか家族の部屋を確保しています。活かすにしてもある程度ボリュームが必要なのではないでしょうか。

吉田氏

いいえ、私はボリューム、家のサイズはそんなに必要なことではないと思います。確かに日本に比べるともちろんアメリカの土地は大きいですが、マンハッタンなどの都心の高層ビル街へ行くと、コンドミニアムもアパートも存在しますし、物件の大小にもかなりの差があります。日本でいう1Kのアパートのようなお部屋もたくさんあります。ですから問題なのはボリュームではなく、そのスペースをどう活用して、機能的にアレンジするかということだと思います。東京の住宅では、その狭さを利用してデザインをすること、そのセンスが必要です。不動産の付加価値を見出すということも重要ですね。例えば、住宅のサイズにとらわれず、予算を準備されている方は、小さなスペースをリノベーションされるのであれば、同じ予算内で贅沢なインテリア素材や建材に投資することができます。アメリカのように、キッチンや洗面所の水回りやインテリア全改装をするだけでなく、狭い空間でもその個性を活かしながらのリノベーションをすることを提案できます。それにはクライアントに「この条件ならこういうことができる」と的確にアドバイスできる人材も必要です。例えば、天井の高いスペースだったり、自然光がたくさん入る空間だったり、子育て世代なのか、または高齢者なのか、その用途に合わせてアドバイスすることがサイズ以上に重要なことなのかもしれません。

安さ重視からの脱却
「センスを買う」という思考で
可能性を広げる

金城社長

日本とアメリカではリフォーム・リノベーションへの意識も随分違いますよね。日本のリフォームは修理するというところからのスタートで、デザインや色づかいにしても「無難なもの、無難な色」になってしまうんですね。あくまで直す延長線上で、「どうせ直すなら少しでも格好よく」という認識なんです。私としては、デザインなどのセンスにブランド性を持たせて、センスを買うというか付加価値をつける形で不動産の方に持っていきたいと思っています。

吉田氏

アメリカでは、アパート、コンドミニアムや一戸建てで、不動産の売却は、デザイナーが手掛けた空間(物件)ですと第一印象が良く、回転が早いと聞いております。インテリアを清潔に保ち、デザイナーと統一感のある空間を築いた方達の物件は、空間に掛けた『情』をとても感じます。もちろんケースバイケースですが。インテリアデザイナーにかかる費用と時間は、住宅インテリアデザインそのものと同じ価値で『投資』と考えている人たちも少なくないと思われます。つまり、クライアントはデザイナーの知識を尊重し、またそのデザイナーの感性に寄り添うということなのかもしれません。

金城社長

では売却する前にデザインの相談を受けることもあるのですか。

吉田氏

あります。アメリカでは自分の個性を活かしたお部屋に住んでいる方が多いのですが、住空間を売却する際には、なるべく、バイヤーの方が共感できる個性を避けたシンプルで清潔感のある空間、時間と予算があれば壁もニュートラルな色に戻す方も多いです。売却する空間は、バイヤーが自分のライフスタイルに合うかというインスピレーションを掻き立てる魅力的な空間にします。空間が個性的すぎると、それ以上自分が住むという想像が浮かばないんです。ですから売却を目的とする方の中には、購入する前からインテリアデザイナーを雇い、的確なアドバイスを求めてこられる方もいらっしゃいます。不動産仲介のエキスパートとのコラボレーションはとても必要なキーエレメントだと考えています。

金城社長

購入時のリフォームについてはどうですか。

吉田氏

クライアントの方とは、家探しをしている段階から関わることもありますので、不動産仲介の方と一緒に物件を見に行って、インテリアデザインのプロの観点から「ここを改装するのは難しい」とか「ここは色を変えれば空間が美しくなる」などとアドバイスをします。クライアントにとって一番プラスになるのは、インテリアデザイナーと不動産プロフェッショナルが相手の立場に立ち、ライフスタイルをサポートすること。早い時期から一緒に不動産の投資の価値をスタートから盛り上げていくことが大切です。このプロセスが最終的には無駄をなくし、購入時に予算を組み、統一感のある最高の住空間を創ることができるのだと思います。リフォームをする初期段階からインテリアデザイナーを一つの投資と思っていただくこと。資産価値を上げるためのリノベーションのプロセスを一緒に進めていくという形が理想です。

金城社長

そこに価値を見出してもらうということですね。日本ではものを安く売ろうという時代が長く続いて、皆がそれに対して飽き飽きしているような状況だったんです。これからは付加価値を高めて売っていかないと日本も先細りになっていくと思います。
当社も不動産仲介の仕事をメインにやっていますが、今後日本の人口が減ってくる状況のなか、ただ単に仲介するだけではやはり先細りになるという懸念があります。これからの時代はものを買って、付加価値を高めて提供するということをしていきたいと思っています。ぜひ近い将来に、当社が購入した物件に対して吉田さんに手を加えていただき売却という形でお仕事をさせていただき、今後も繋がりを持っていければと思っております。 よろしくお願いいたします。

吉田氏

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

コラボレーションデザインパートナー 吉田 恵美 Yoshida Satomi
スペシャル対談